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インプロ・セミナー「AI/IoT時代を生き抜くキャリア戦略」 開催報告 第4回 (2018年11月21日開催)

2019.06.21

セミナー

人生100年と言われる時代になり、インターネットやAIが発達した今日、個人のキャリア形成、会社との向き合い方も大きく変化し始めた。そこで、コラボレーションで新たな価値を創造に取り組むビジネス・コンサルティング会社、シグマクシスの柴沼俊一氏を迎え「AI/IoT時代を生き抜く4つの“観”」というテーマで講演会を開催した。最後は参加者からの質問と、それに対する柴沼氏の考えをお伝えする。

(2018年11月21日開催)

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Q:これからの時代、求められる人財像は「アグリゲーター」であるということですが、アグリゲーターになるにはどうすればいいのか、何から変えていけばいいのか、教えていただけますか。

柴沼:これは人によってアプローチは違いますし、「こうすればアグリゲーターになれる」という解はないと思います。

アグリゲーターの動き方の本質は、「自律型組織の中でお互いを尊重し、相互にgiverネットワークでgiveしながら、自分本位でのtakeをしない、という関係性の中でビジネスをする」ということだと思います。そういう思考回路と人間関係で物事を動かすには、かなり受容度が求められる。自分と意見が違うものを受け止めるといった精神性が実はすごく大事なんですね。その受容度をどうやって上げていくか、そのやり方は人によって多分違うと思います。

私の場合、子育てに大きな気づきがあり、それがきっかけで変わりました。自分の仕事の成功も大事、でもそれ以上に子どものために時間を使う事も重要。子供との関わりからの学びが自分の仕事にも最終的にはフィードバックされる。思い通りにいかないことがあったり、時間を想定以上に使ったりすることがあっても、最後は全体として互いに成長できる。これはビジネスにおいても同じだ、と思ったんですね。

結局、アグリゲーターがリードする「共創」の世界は、みんなで儲かることで自分も儲かる、という世界。Giveを続けた結果、最後に「柴沼さんにもGiveばかりじゃなくて、Takeしてもらわないと。損されたら僕たち困るよ」って言われて、「あ、じゃあいただきます」という関係性なんです。お金はお布施みたいな感覚ですね。

美味しい作物をたくさん作りたい、と思ってみんなで種をいっぱいまくとします。時にはうまく収穫ができない時もあるかもしれないけれども、「雨が多い時の対策をもっとやらないと」「種の量を増やしたら?」「石の上にも巻かないように気を付けよう」とワイワイ議論しながら互いに盛り上がってやっていれば、最後は太陽と空気と水でだいたいの作物は育って収穫できる。自然農法に近い感覚だよね、と思いながら私たちはやっています。

(写真:質問に答える柴沼氏)

Q:イノベーションを起こすには、時代を先取りした事業の着想が大事なのかなと思っていましたが、「受容すること」がまず重要だというお話ですね。そもそもそこがないと斬新なアイデアはあっても事業を形にできないということでしょうか。

柴沼:事業の種はいつ何が“発芽”するかは分からないですね。そしてその種を発芽させるのは、一人ではできないんですね。事業化できそうなビッグウエーブが来たときに、偶然その波の上に立っているのは結構難しいですよね。狙ってできることではありません。実際は、「この人すごいな、この人と一緒に何かやりたいな」と思えると付き合い、物事を進めていって、盛り上がっていたらちょうどビッグウエーブが来た…というくらいだと思うんです。

だから、いろいろな領域に仲間を増やしておくことが大事なんだと思います。「この人とちょっと付き合ってみよう」という意識を持ち、付き合い続けることですね。

イノベーションがどこで起きるかは本当に正直言ってよく分からないので「面白そうだな」「こんな人と事業ができたらすてきだな」と思いながら3年から5年ぐらい事業に取り組んでいると、その数が10個ぐらいになる。そうやっていくと、10個のうち1個ぐらいは来るんですよ。あとから「これは前から分かっていました」と大概は言うんですが(笑)、実際は全然分かっていないですよ。偶然です。それでいいんです。

Q:高齢化社会について、柴沼さんが注目している点があればお聞きしたい。

柴沼:人生が100年時代になり、人間が人として豊かに生き続ける上で最近議論になるのが、ベーシックインカム(BI)ですね。一方で、それを支えるベーシックサービスが、今回お話しした「限界費用ゼロ社会のサービス」です。

私たちは、いわゆる皆が生きられる社会を作らないといけないわけですが、ベーシックインカムを導入できたとしても、みんながハッピーな生活ができますかという意味では、この限界費用が0の社会インフラをどこまでつくれるかにかかっていると思います。そういう意味では時間との闘いがありますね。

(写真:シグマクシス・柴沼氏)

過疎地で必要なエネルギーは当然自然エネルギーで賄っていかないといけないですね。この領域は、系統電源を切らないと負担が大きい。じゃあ、完全にオフグリッドの世界をつくれるかという問題になるわけなんですが、電気は貯められないという概念が強い。実際、今の蓄電リチウムイオン電池が中心で、効率が悪いんです。今トヨタが取り組んでいる全固体電池のようなものができてくると、完全にオフグリッドで夜間に貯めて昼間使う事も可能になり、系統電源自体が切れる可能性が出てくる。万が一の場合でも、全固体電池をデリバリーすればいいんですと。こうなってくると、例えば電気は限界費用ゼロに近づいてくる。

実は電気より難しいのは水です。このままいくと水が不足して、水素と酸素を組み合わせて作る、ということを本気で考えないといけなくなるかもしれない。今は未来に向けて一つひとつそういう問題を解いていくしかないのです。

しかしこうやって電気や水を限界費用ゼロでなんとか手にいれたとして、今度はこれで幸せかという話になりますよね。

そこで、大事になるのが、コミュニティーや共感資本という世界かなと思うのです。最低限のことができないと「飯を食わせろ」に終始してしまうので、その土台を作りながら、共感資本のコミュニティーをこれから10年ぐらいの間にどうやって作っていくか、そんな時間軸だと個人的には思っていますし、そんな社会を作っていきたい。

(写真:シグマクシス・柴沼氏)

Q:コンサルティングファームのコンサルタントが事業会社に対してサービスする時に、どういう世の中の変化を意識されていますか。

柴沼: 私たちは、ビジネスのストーリーの絵を描いて、それを企業に持ちこんで提案し、実行に移しています。例えば今は、三菱商事との共同事業や、ローソンとの共同事業を手掛けていますが、目指す姿を提示して「これを一緒にやりませんか」と言って始める。大企業は当然稟議を通さないといけないわけですが、「柴沼さん、やりたいが稟議を通さなければならない、そのために市場調査をやりたいんだよね。まずそこはプロジェクトでお願いしてもよい?」「いいですよ。半年か1年ぐらいでやりますか。それでgoかno goが決めましょうか」という感じです。

つまり、売り方がこれまでのコンサルティングと違うのです。「あなたの課題を解決します。」「あなたがやりたいことは何ですか」が論点ではなく、「私はあなたとこれをやりたいから一緒にやりませんか?」ですね。ご先方があまりやりたくない様子だと、じゃあ私は他をあたってみますね、となるわけですが、そういう場合も「柴沼さんちょっと待って。3カ月ぐらいだけ一緒にやってみますか。」と言っていただけるケースが多い。そしてやってみえたら、「俺たちがやっていることは間違っていない、もうちょっと本気だしてみようか」となる。そして、じゃあやろうとなったら共同事業で立ち上がる、という流れです。

お客様も、今やりたいことが自分でも分からないことが多い。だから我々の方から、「社会のためにこういうことをやりませんか?」と持っていく。以前と立場が逆転しているんです。

Q:今の世の中は副業、フリーランスというキーワードが叫ばれて、政府もそちらに誘導しているように思います。本当はアグリゲーターになり切れてもいない状態で、ノマドワーカーに転じる人も増え、働き方の自由を叫ぶ声も大きくなってきている。会社全体をアグリゲーター、フリーランス、副業型にしてしまったら多分壊れてしまうという感覚を持っていて、そのあたりのバランスは経営者としてどう考えればいいのでしょうか。

柴沼:社内のどの領域で、アグリゲーターを活用するかという領域の判断と、両刀を使うマネジメントが、これからの経営者に求められています。当然効率を追求しなきゃいけない世界はある。そしてそちらの方が心地いいという人もいます。よって「インターナルマネジメント領域」「エクスターナルマネジメント領域」と切り分けて、両方を並行してマネジメントするということですね。

(写真:当日の様子)

Q: 2060年ぐらいになると世界の人口は100億に近くなると言われていますが、こういう状態がそもそも世界に受け入れられると思いますか。

柴沼:まず人口の伸びというのは徐々に伸び率は小さくなってきています。実は都市化、アーバナイゼーションが起きると人口は伸びなくなると言われています。農村だと子供は労働力ですが、都市では消費する側になるので、増やしにくい。労働力たる子供が亡くなると大人の生活も危うくなるから昔は多産だったわけですが、公衆衛生のレベルが上がり、都市化が進むと死亡率は下がる。むしろ一成長するまで投資しなきゃいけないから子供を持ちにくい。基本的に人口増加のカーブが落ちてきている理由は、都市化にあります。

一方で、2060年に72億人が100億人になるというときには、当然のことながら食料や水といった問題がおこりますね。

例えば食品に関して、突き詰めていくと、人間が求めるのは「満腹感を得る」こと「栄養を得る」こと、そして「エンターテインメント」に集約される。要は「おなかいっぱい食べたい」「おいしく食べたい」「みんなとわいわいやりたい」という話です。

今テクノロジーを使うと、VRで脳を刺激すると満腹感は得られる。完全栄養食みたいなものが今出てきていますが、培養肉やアミノ酸の組み合わせなどを選んで摂れば、物理的に満腹にならずとも、体が必要な栄養分は取れるわけです。満腹感やエンタテイメントはVRで、済ませてしまえば3つのポイントはカバーできる。これがお金さえあればもう可能です。

中国では食料自給率20%を維持するというのが国家的なミッションなんですね。今1人当たりのGDPが6,000ドルぐらいですが、これが1万ドルになりますと、大体国民が肉食化します。中国人が肉食化すると、それを賄うためには、地球が3つ必要になると言われいます。でも地球は3つないですし、すでに他の国の水を買っている状態ですから、おのずとテクノロジーを使って、満腹感と栄養分とエンターテインメントに分ける方向に行かざるを得ません。このようにして何とかこの問題を乗り越えていくというのが、戦争がなかりせば100億人を受け入れるための方向性ではないでしょうか。だからこそ、テクノロジーの進化と活用が、より重要になってくるのだと思います。

 

柴沼俊一氏

プロフィール

株式会社シグマクシス マネージング・ディレクター ヒューリスティックシェルパ担当。
日本銀行、外資系コンサルティングファーム、ファンド投資先企業を経て現在に至る。金融、消費財・サービス、製造業、ファンド等の幅広い業界に対し、全社・事業戦略やM&A・提携戦略の策定・実行支援、新規事業立ち上げ支援、営業・マーケティングのオペレーション革新等のプロジェクトを得意とする。現在、グロービス経営大学院教授。

(開催報告は以上となります。ご愛読ありがとうございました)

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